アビリティトレーナーとは「質の高いプレー」をリズム音やITを使う事で効率よく把握、習得するためのトレーニングシステムです。私たちの内面には「質の高い動きができるもう一人の自分」が存在します。しかし、漠然と努力を積み重ねても、質の高い動きのできる「最高の自分自身」を引き出すことはできません。それどころか、時間を空費するばかりで、目標に繋がっていかないのです。では、どうすれば「最高の自分自身」を効率よく引き出すことができるのでしょうか?

 

それにはきちんとした上達のプロセスに則った正しい努力、すなわち「アビリティトレーナー」に基づいたトレーニングが有効なのです。

アビリティトレーナーでは動きの本質を、リズム音や加速度を駆使し把握することによって、「質の高いプレー」を効率よく習得していきます。そもそも、運動は全て無意識下の自動的なものでなければいけません。たとえば野球の打者のスイングを考えてみてください。無意識でない運動――つまり、飛んでくる球に対し、重心を整えて軸足にしっかり体重をかけ、反対の足に体重移動し、腰をひねり、手首のスナップを効かせ……などと細かく考えながら動いていては、その間にボールはキャッチャーのミットに収まってしまいます。大事なことは理想的なスイングの型を身体に沁み込ませ、飛んでくる球にも反射的に理想と同じスイングを繰り出せるようにしておくことです。

 

■脳に「質の高いプレー」がインプットされれば瞬時に出せる

なぜ人は無意識でもそのような動きができるのかというと、そこには脳の働きがあります。脳神経系の一つに、運動調節や認知機能などの機能を担う大脳基底核という部分があるのをご存知でしょうか? この大脳基底核に理想的な「質の高いプレー」がインプットされることで、運動時になると瞬時にこの「質の高いプレー」の動きを出すことができます。

 

スポーツエリートの選手たちは、この能力を習得しています。そのために、理想的なフォームの維持は勿論のこと、酸素摂取量が少なくとも省エネで体を動かし続けることができるなど、優れた運動能力を有することが可能なのです。アビリティトレーナーでは、大脳基底核に理想的な「質の高いプレー」をインプットするために、リズムに合わせて体を動かす「BRPトレーニング方法[1]」と、動作を視覚化することを目的にした「3軸加速センサー」を用いてトレーニングを行っていきます。

 

■通常、「高精度で再現性がある運動形態」に作り直すことは容易ではない

歩行などの日常的な運動は、幼児期の「見よう見まね」から始まり、やがて自分自身が動かしやすい方法で、運動方法や動作のタイミングを覚えていきます。このような日常的な所作や歩行レベルの運動であれば、「質の高い動き」でなくても日々の暮らしに大きな弊害はありません。

 

しかし、スポーツのような負荷が高く長時間繰り返される運動では、鍛え上げた筋力だけではなく、精度の高い運動が必然的に要求されるようになります。ところが、いったん習得してしまった無駄の多い運動方法を、「高精度で再現性がある運動形態」に作り直すことは容易ではありません。そこで正しく作り直すために必要になってくるのが3つのプロセスなのです。

 

■正しく動作を作り直すための3つのプロセス

運動をゼロから覚え直す必要性はありません。「高精度の再現性」に必要な要素だけを集中的にトレーニングして改善していきます。次の3つのプロセスに基づき、トレーニングを繰り返し行っていきます。

 

1.タイミング(テンポ&リズム)[2]

BRPに基づいたリズム音を使うことで、運動に必要な「タイミング」を1秒~0.1秒の間の精度で繰り返しトレーニングをします。

2.リズム感(力の強弱の調整力)

BRPに基づいたリズム音を使うことで、運動に必要な、力を発揮させる「タメ」や「間」についてのトレーニングをします。

3.バランス(体の認知能力)

自らの身体の可動域を知ることで、精度の高いトレーニングの出来不出来を、自ら判断します。

 

上記の3つのプロセスをさらに効率的に行うことができるのが「3軸加速センサー」の存在です。

補助具「3軸加速センサー」で運動の視覚化を図る

 

■3軸加速センサーの活用

「3軸加速センサー」は、取り付けたセンサーによって身体の中心軸にある腰部位の動きを計測することで、スポーツパフォーマンスに大きな意味を持つ腰の「動きの質」を可視化することもできます。「3軸加速センサー」は、0.01秒という非常に精度の高い計測ができるので、感覚に頼りがちな動作の違いを波形によって確認することができます。波形の解析には経験と運動学などの知識が必要となりますが、「3軸加速センサー」は、高価な赤外線モーションキャプチャなどといった設備費や計測器等の制約が無く、低コストであることによって運動解析の可能性をさらに押し広げる可能性を秘めています。

 

再び野球の打者を想像してみてください。バントとは、飛んでくる球にタイミングを合わせてバットを当てる、「タイミングを生かした」打撃です。しかし、これを長打にするには、バットを当てるのではなく、渾身の力で振り抜くことが必要になってきます。この「最適なタイミングにインパクトを加える動作感覚」こそがリズム感であり、精度の高い運動をするためには必要不可欠なものとなっています。是非アビリティトレーナーを現場で活用してください。

 

★3プロセスと同時に、次の2点に留意したトレーニングを行うと、より精度の高い運動が可能となります。

A.ボディコンディション

質の高い動きを再習得する、もう一つのポイントは、筋肉の柔軟性と股関節や肩甲骨、体幹の稼働率です。質の高い動きを習得するためには、上記に挙げた3つのプロセス「1.タイミング→2.リズム感→3.バランス」以外に、体のコンディショニングも重要な要素となってきます。

 

B.筋力(フィジカル)の強さ

前述したとおり、日常的な行動や運動の場合は、人並み外れた筋力や持久力はそれほど必要ありません。ですが、スポーツで好成績を求める場合は、高速運動に対応できる一定以上の筋力の強さが必然的に求められます。

 

■補足情報

[1]  ※BRP…ブレイン・リズム・パフォーマンス(脳動作誘導)のこと。

動きを音と関連付けることで、理想の動きが反射的に繰り出せるよう、脳へ刷り込んでいきます。

[2] 「タイミング」と「リズム感」の違いについて

どちらも音楽の「拍」に関わる言葉ですが、本書では下記のように差別化を図っていきます。

「タイミング」とは、音楽の「拍」に「合わせる」ことです。タイミングを鍛えることで、拍に合わせる能力を身に着けることができるようになります。

一方で「リズム感」とは、「拍」に「合わせる」だけでなく、そこに力の強弱の要素が加わります。つまり、リズム感を鍛えることによって、拍に合わせて力の強弱をコントロールできるようになるのです。